秘密は暴かれる

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 5月の空は真っ青に澄んで、教室の窓から差し込む陽射しは眩いばかり。  昨日で中間テストも終わった。  清々しい気持ちでいっぱいだ。  番犬のような伊織も部活が始まり、登校も下校も一緒にはなれない。  教科準備室にだって入れる。    朝のSHRの終わりのチャイムが鳴ると、「教科係、昼休み、手伝い来て。」と無表情な上にちらともこっちを見ずに言って教室を出て行った先生の、そのそっけ無ささえ私の踊る胸の鼓動を速めるのに一役買ってしまう。  ただ隣の山田君が訳知り顔で私を見てニヤリと親指を立てるのが何やらありそうで、不安を煽る。    案の定、休み時間になると、ゆーかちゃんが私の席までやって来てぐふふと笑いながら肘で小突いて来た。    「あやし~、準備室で禁断?」    こそこそと私の耳に囁くものだから、慌てて彼女の口を手で塞ぐ。    休み明けから何かと探りを入れて来る彼女の攻撃に少々辟易していたのだが、この発言は無視できない。    「や、やめてくださいよね。ただの雑用係なんだから。」  「大丈夫、大丈夫。  私達、『柚衣ちゃんと蒼ちゃんを温かく見守る会』は、秘密厳守だから。」  何ですかそれは?とゆーかちゃんを見て固まる私に、前と隣の席から、    「大丈夫!」と振り向きざまに声を揃え二カッと親指を立てる、真理ちゃんと山田君。    なんなの?この共通点のまるで無さそうな3人組。    先生、全然大丈夫な気がしません。        昼休み。  3,4時限目が体育だったので着替えで遅くなってしまった。  お弁当のおにぎりの入った手提げ袋を持って生物準備室にダッシュで向かう。   入口の前で、深呼吸をして息を整えていると急に目の前の引き戸がガラガラと開いた。    「わっ!」    「入って来ればいいのに、何してんの?」      見上げた先に私を見下ろすいつもの深澤先生。    「あ、失礼しまーす。」 先生の腕が入口の上の方を突っ張って塞いでいるので、その下会釈をしながらくぐって通り抜ける。    先生が後ろ手に戸を閉め最後にガチャっと鍵を掛けた。        
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