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先生は私とゆーかちゃんを車に乗せて送ってくれると言う。
準備室を出て職員室に向かう先生と教室に荷物を取りに行く私達は、途中まで一緒に廊下を進んでいた。
校舎の中にはまだ何人か残っている生徒がいるようで、遠くで話し声や、時々笑い声が聞こえて来た。
「え?うち市内だから歩いても帰れるんですけど、いいんですか?」
「いや、むしろ頼みます。」
「へ?」「先生、何かあった?」
先生が唇に人差し指を当てながら、少し屈んで声を落として言った。
「校長に特定の女子生徒を贔屓しちゃいかんと釘刺されちゃったから。」
「え?それって先生、あの…吊し上げ?…」
私も先生を見上げながら囁き声で聞き返す。
ゆーかちゃんも同じように声を落として呟く。
「蒼ちゃん、やりたい放題してたらだめだよ…」
え?え?ゆーかちゃんに窘(たしな)められちゃいましたよ先生。
長谷川に言われちゃったよ…と先生も応酬。
まあまあ、ここはひとまず収めて、ね?
職員室の手前の階段の所で、裏門で待っててねと言われて別れた。
ゆーかちゃんと二人で後部座席に座ると、まずゆーかちゃんの家に送るからと先生。
「ゆいちゃんの家って先生と方向一緒なの?」
「うん。」
歩いてもすぐだと言うことは、内緒だよね。
でもさ、坂口君ってやっぱりゆいちゃんが好きだったんだね~、とかここで蒸し返して欲しくないことを言いだすゆーかちゃん。
「あー、橘に近づくやつみんな威嚇してるからねー。」
と話に入って来る先生、ちょっと待った、それって?
「蒼ちゃんも気が付いてたんだー」
「最近ね。」
え!
「紗枝がイライラする気持ちも分かるんだよね~朝なんかほら、ゆいちゃんの荷物持って、後ろの守護神か?って感じだし、ゆいちゃん、あれで振った後なの?」
なんで、今わざわざ先生の聞いてる所で…と思ったけど、だからなの?と思い直して、しぶしぶ答える。
「喧嘩した後謝りに行った時、友達だから!って言った。通じたみたいだった。」
「だってさ、蒼ちゃん。」
「そうみたいだね。」
「なんだ、知ってたんだー」
え?今の会話、何?
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