姫君の受難と暗躍する騎士

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   お昼休み、中庭のベンチで真理ちゃんとゆーかちゃんとで、お昼を食べる。    木陰になったその場所が涼しく感じられるほど、日向は夏のような暑さだ。    私のは、3時間目の休み時間に急いで購買で買って来たパンとミルクティ。  真理ちゃんのは美味しそうなお弁当。    ゆーかちゃんはおにぎりとから揚げ、きっと登校前にコンビニで調達してきたんだろう。    だから、ぎりぎりだったんだ。    「ゆいちゃん、コロッケパン、ちょっとだけあーん。」    と口を開けるゆーかちゃんに、口を付けて無い方の端をちょっと千切って口に放り込んであげる。  「私にもから揚げー」とおねだり。    「えー、大きさが随分違う。じゃあそっちのシナモンロールも頂戴。」    「なんか、私損してない?」    「ないない、から揚げが一番エライ。」    「ぷっ」  「あ、ほら真理ちゃんに笑われたー」      「お前ら揃って小学生の会話だよそれ。」    いきなり会話に割って入って来た長身の人影に、3人揃ってビクッと上を見上げる。     「せ、先生!」    「蒼ちゃんも一緒に食べる?あ、でもこのベンチ3人掛けだよ?」    「準備室から見えるんだよ…橘、今日はパンなんだ。…」    「う…寝坊したから…」    「え?お母さんは?仕事?」    「えっと、朝はだめなんだって、頭痛くて。」    「あ、そーなんだ、じゃあいつも自分でお弁当作って来るんだ、えらーい!」    「や、その、あるもの詰めるだけなんで……先生お弁当の話をしに来たんじゃないですよね。」    「あ、うん。ちょっと聞きたいことがあって。」    「え?それって例の紗枝と坂口君の話?」    「うん…まあ、そう…かな…?」    「あ、もしかして私いない方がいい?」    「まりちゃん大丈夫だよ。ね?蒼ちゃん。」    「う、うん…」      先生は側の樫の木に寄り掛かってゆーかちゃんの話を待つ体勢のようだ。    「と言ってもね、関東大会予選の団体戦があってさ、紗枝も中々その手の話は切り出せないって言ってたよ。    ほら、テニスってメンタル影響するじゃん、話をする余裕も無いらしいんだ。」    「へー坂口ってメンタル強そうに見えるけど…」     「あ、伊織は実はビビリだよ、強がってるけど。」
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