姫君の受難と暗躍する騎士

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   なんだか今までと立場が逆転したような感じだ。    大概、横暴な伊織にもーと言いながら従ってたんだよね。    私が変わったのか?    「松本のことだけど。」    「え?それはいいって言ったじゃん。」    「嘘吐いたことに変わりはねーだろ?」    「だから、それは、伊織と帰りたかったからじゃない。」    「そう言うんだもんなー。」    そう言って頻りに首の後ろを掻く伊織だった。          伊織とコンビ二の角で別れ、走って家まで戻ると先生が玄関から出て来て帰ろうとしているところだった。    「あれ、先生もう帰るの?」    「もう、ってもう30分もお邪魔してたよ。  坂口は?帰った?」    「うん、話をして、納得して帰ったから大丈夫です。」    「随分成長しましたね。」    「何それ?」    「もう、ひよこじゃ無いねってこと。」    「ひよこじゃないと何か変わる?」    ニヤリと笑った先生が私の耳元に囁く。  「‥‥‥‥‥」    私の顔が真っ赤に染まるのを見て、また嬉しそうに笑う先生。    ホントにタチが悪い。  「ただいまー」    「遅かったじゃない、先生帰られたわよ―」      ダイニングに行くと、お父さんとお母さんが二人で仲良くテーブルに着いて遅い夕飯を食べていた。    最近見たことの無かった光景だ。      「夕飯、今?もしかして待ってた?」    「あ、先生にぜひって勧めたんだけど、結局食べないで帰られたのよ、だから、今なの。」    お母さんの顔が明るい。    「何かいい事あった?」    「ふふふ、お父さんがね…」      今までのような、一日14時間労働で休みなく働くのを改めて、週に一回は休みをとって毎日の仕事の時間も、8時から9時の12時間労働に改めるのだと言う。  その上、お母さんもスタッフさんにまじってお昼時の忙しい時間とか、お店の手伝いをするんだそうだ。      「どうしちゃったの?急に‥‥」    「先週、お前の先生がお店に見えられて色々と話して、助言をしてくださってね…家族が大事なら、今みたいに一人で苦労を背負ってちゃいけないってね。」    「ほんと、なんでこんなに親身になってくださるのか不思議だったんだけど、今日、分ったわー。」    え?え!えー!
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