エピローグ

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   朝から空は晴れ渡り、まさしく体育祭日和。    いや、これだけ晴れてると、却って紫外線をもろに浴びるし暑すぎて大変だ。    生徒にも帽子と日焼け止めの用意を忘れないように言って置いて正解だった。    職員は全員早朝から出勤して、テント張りにライン引きと準備に忙しい。    体育祭実行委員も今日はいつもより30分早く登校して既に体育倉庫から荷物を運び出し所定の場所に置き始めている。    本部用のテントの下、マイクの準備に絡まった電源コードで知恵の輪をしていると、校長が側にやって来た。    やや声を落として話し始めたので少し腰を屈めた状態で耳を寄せる。    「深澤先生、先日は忙しい時に時間を取らせてすみませんでした。」    「いえ、こちらこそご心配をおかけして申し訳ありませんでした。」    「あそこにいる生徒が先生のクラスの橘柚衣ですね。」    校長の視線の先に、入場門の脇辺りで山田と一緒に用具の確認をしている姿があった。      「ああ、あの女子生徒です。何か?」    「いえ、先日確認させて頂いた指導要録でも思ったのですが、深澤先生に節度を持って接して下さい等と失礼な事を言ってしまったと。」    「あ、それは校長のお立場はからすれば当然の事と受け止めておりますが。」    「そうですが、最近の女子高生は発育も良くて、外見だけ見るととても高校生には見えない生徒がおりますので、その、投書にあった女子生徒もきっとと、勝手な憶測をしてしまいました。」    「ああ、私が大人びた女子生徒と間違いを犯したら‥と心配されたんですね。」    「生徒に好意を持たれて振り切れなかったと過去にそういう例がありまして‥いや、申し訳ない。」    「で、橘本人を見たらそれは無いな、と思われた。」    「まったくその通りです。  逆に確かに心配になる幼さだと思った次第で。 それで、どうですか?あの生徒の様子は。」     「先日の面談などから判断しますと、本人の状態は今は良好だと思います。」    「それを聞いて安心しました。 今後もそれとなく気を付けて上げてください。」      そう言って校長は、また別の持ち場で働く職員に声を掛けに行く。
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