エピローグ

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   校長の人柄に敬服しながらも、彼の間違った点を心の中で訂正する。    ご存じだとは思いますが、外見だけでは、子供か大人か判断できないものですよ、校長。    しかし、橘柚衣の童顔と幼児体型がこんなところで役に立つとは‥‥いや、振り返って考えれば、柚衣を女と意識するのはありえないと判断されたんだ。    それはちょっと喜んでる場合じゃ無いんじゃないか?    明らかに変態と言われたも同然。    しばし、知恵の輪を放棄して痛む頭を抱えていた。          実行委員の仕事も今の所順調に行ってる。    お昼休みに入り、ゆーかちゃんと真理ちゃんに誘われて中庭の木陰でお弁当を食べる事になった。    水筒も持って来ていたが、気温はもう25度を超える暑さで、とっくに空っぽ。    「お茶買って来るよ、真理ちゃんとゆーかちゃんは?一緒に買って来るよ?」    「あ、じゃ私無糖のアイスティーで」    「私、麦茶にする。ゆいちゃん、一緒に行こうか?」    「わかった、大丈夫だよ、真理ちゃん座ってて。」    渡り廊下の角を曲がった所にある自販機の前で先生に遭遇。    スポーツブランドのロゴの入った、黒に白いラインのジャージを着ている。    先生が私を見下ろして笑っているので、つい突っかかってしまう。    「先生、人を見て笑うとか失礼じゃないですか。」  「はは、校長が疑って悪かったって言ってくれたよ。」    「それが、そんなに面白い事?」    「ああ、橘が小学生にしか見えないからありえないと思ったらしくて……」    「う~。喜べない~」    「俺も内心複雑だけどね。ところでどう?最近ご両親は?」    「そうだ、先生!ありがとうございます。    お母さん、なんだか張り切ってて、あの、陰鬱な空気が嘘みたいに消えました!」    「そう、それは良かった」    先生が私の頭に手を置いてくしゃくしゃと弄りながら優しく微笑むので、くすぐったくて首を竦めてしまう。  「そう言えば、あの日お母さんが変な事言ってて、先生が親身になってくれる理由が分かった、なんて。    先生、お母さんに何か言ったんですか?     お母さん、教えてくれなくて。」     「2年前の話をしただけだよ、だから本当はいけないんだけど、特別扱いしてしまうってね。」
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