先生のパーカー

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   〈 夕飯の買い物して来て。 よろしく(^_^)/ 〉 と母親からメールが来て、現在、自宅最寄駅の駅ビルに入っているスーパーで、買い物中。 時間を見ると、もう8時近い。 あの後、学校を出て駅の近くのファミレスで、また暫(しばら)く、話し込んでいたのだから仕方ない。 こんな時間からじゃ、遅くなっちゃうから手抜きでいいよね~とお惣菜コーナーへ向かう。 すると、前方に見覚えのある長身の後ろ姿が……まさか……ね? 手にカゴを提げ、もう一方の手を、思案気に顎に当てている。 ベージュの綿パンに、黒のポロシャツ―これは白衣の下に着ていたような気がする。 その白衣は流石に脱いで、代わりにモスグリーンのパーカーを羽織っていた。  やっぱり……先生だぁ……何か…ゆるい。 横を向いた立ち姿の胸の薄さが。 ぼさぼさ頭に半分隠れた黒メガネ、その下の高い鼻と細い顎のラインを見せる横顔が。 ちょっと、猫背気味に首を下げ、片足に体重を乗せた細い脚の気怠さが――先生だ。 自分の口元が、ニマニマと緩みっぱなしな事に気づき、よしと顔に力を入れたら、さすがに気づいた先生が私の方を振り向いた。
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