先生のパーカー

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「あれ?橘。随分遅いけど、今帰り?」 私はタタタっと先生の傍まで駆け寄る。  先生は、私の制服に目を留めて、「悪いおじさんに連れてかれちゃうよ?」と冗談交じりに注意した。  「そのおじさんが、ぼさぼさ頭にメガネでモスグリーンのパーカー着てたら、連れてかれてもいいんだけど。」  先生を見上げて、いつもの私なら「ないない」というところを精一杯、媚る。  先輩達から、恋する乙女は自分をアピらないとだめだ。とさっき指南を受けた。 先生の反応が楽しみ…… だけど、私の言葉に少し吃驚したような様子をした後、急に不機嫌になったような…気がする。  「会話の法則が変わったね。なに?その安い女の誘い文句みたいなの。」 先生の声の冷たさに背筋が凍る。 き、嫌われた……声が怖い……怒ってるんだ……ど、どうしよう…先生に会えた嬉しさで、又調子に乗ったんだ… 「………ごっ…ごめん…な…さい……」 思うように動かない脚を、なんとか少しづつ運び後ずさりする。 下を向いたまま、踵を返してその場を離れようとした――   「待てよ。……」 が、先生に肩を掴まれ止められる。
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