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先生は、私を駅ビル出口付近のベンチに座らせると、
「ここで、待ってて。」
と言って、私のリュックを物ジチにして、またスーパーの方へ戻って行った。
恥ずかしさと後悔と不安とが入れ替わり立ち代わり襲って来る。
先生に羽織らされたパーカーに袖を通して、匂いを嗅ぎ、先生に包み込まれているような錯覚に、ほんのちょっと慰められていると、程無くして、先生が、帰ってきた。
さっきの買い物の続きをしてきたらしく、白いスーパーの袋を提げて居る。
あぁ、買い物して無いや……。
先生は、荷物を一旦ベンチの上に置くと、「ちょっと立って」と、私を立たせ、自分は屈むとパーカーのチャックを下から上までジーと締めた。
「暑いかも、だね。我慢してくれる?すぐだから。」
そして、また荷物を全部片手に持つと、私の手を引いて歩き出した。
「あ…先生、リュック自分で持ちますから……」
あわてて、手を繋がれたまま、先生の前に回りもう一方の手をリュックに伸ばした。
不審げに私を見下ろす先生に、「に、逃げません…から…」と言うと、
無表情だった先生の口角が上がり、ニヤっと笑った。『悪魔の微笑みってこう言うのかも』と思い一瞬ゾクッとした。
それでも、リュックを私の背中に背負わせると、また手を繋ぎ駅ビルから外へ出る。
厚着のせいか先生に握られているからか、自分の手がやけに熱い、サラリと冷たい先生の手が凄く気持ちいい。
あんなに後悔していた筈なのに、こうして手を繋がれていると、ふわふわと浮き足だってしまう自分が止められない。
きっと怒られるんだから、喜んでる場合じゃないんだから!
これから取り調べなんだから。
また、私が泣くかもと思って、人目に付かないところに連行されてるんだから。
あれ、ここは、駅前のマンション?
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