1366人が本棚に入れています
本棚に追加
/263ページ
誰もいない家に入り、「ただいま―」と言う。
キッチンに直行して、冷蔵庫を開けてみた。
牛乳と卵はまだある。
あと、ベーコン、ベーコンエッグかあ?
ロールパン、あった。
朝は何とかなるけど、お弁当は無理だな。
あした、準備室に行くんだっけ。おにぎり買っちゃうかな?
うちのコンビニだと買いにくいから、駅で…10分早く出れば…うん大丈夫。
買物、しなくちゃな~
お父さんは夜中に帰ってきて、1回寝て、また朝6時にはお店に戻る。 最初は、深夜も早朝もバイトに任せていたけど、“リーマンショック”以降4年半経った今でも、人件費がバカにならないと言って、0時から6時以外は店に出る。
お昼休みを2時間と、夕飯と休憩の為に夜7時から2時間、家に帰って来るけれど、それでもオーバーワークじゃ無いのか?
「スタッフさんにもうちょっと任せたら?」とよくお母さんが言ってる。
「フランチャイズ制だから独立採算なんだ、それに、店の仕事はレジ打ちだけじゃないんだ。」とお父さんは言う。
それもお母さんには気に食わないところだった。
酒屋だった時だって、人を雇ってはいたけど、御用聞きに配達でお父さんは大変だった。
お母さんは店番はするけど帳簿をつけるのも全部お父さんだったから。
―今は、日報を本部に送ればいいみたいだけど、事務仕事は、山ほどあるんだと言ってた――
もともとはお母さんは、造り酒屋のお嬢さんで、おじいちゃんが酒屋も持っててお父さんはそこの番頭さんだった。
(造り酒屋の方は伯父さんが継いでるし、おばあちゃんが居るのもそこだ。)
その酒屋をコンビニにしちゃったんだから、まあお母さんが怒るのも分かるけど…借金もして、引っ越しもして、ようやく開店してふーとなったら、その年にあの不況だもん。
心底お父さんは運が悪いと思う。
最初のコメントを投稿しよう!