プロローグ

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ーー全ての授業が終了し、放課後ーー  帰りのホームルームが終わった。荷物を纏めて教室を出ようとすると、翔とその仲間達が近寄ってきた。 「よっ、暇ある?今からゲーセン行かねーか」 翔が睡眠の次に好きな物がゲーム、と言うか遊ぶ事だ。こんなダメ人間振りからは想像出来ないくらいに成績や内申点は一丁前にとっているのだから、変な所で器用なヤツだと思う。もうそろそろ夏休みだし、気が緩むのもとても良く分かる、と言うか自分も遊びに行きたい。 誘惑に負けたくなる気持ちは抑えて、名残惜しいが断る。 「あー、ちょっと今日も無理」 「ウッソ。またバイト入ってんのか」 「偶には遊ぼうぜ、気抜きなよ」 そろそろお年玉とかももらえなくなるだろうし、お小遣いみたいな奴じゃなく自分の使う金は時間を犠牲にしてでも自分で稼ぎたいと思っている。何を隠そう、コイツらとまたパーっと使う為にだ。 「そういうこっちゃ、いつも悪いな」 「うーん今日こそ勝ったるつもりだったが」 「少しは予定空けておけよ。最近お前と全然遊べて無いし」 毎日会うから言われて始めて気付く。確かに最近放課後は顔を合わせない。彼等の言う通り息抜きに付き合って遊ぶのも悪くないかもしれない。 「じゃあ、また明日」 「あぁ、今度また誘ってくり」 そう言って翔は他の男子、そして女子を連れて教室から出て行った。翔、彼は顔も悪くないから、女子からも受けが良いのは知っている。プリクラとかも皆で撮ってくるのだろうか。もしそうならちょっとだけ...嘘、結構羨ましい。後日見せびらかしてくるような事があればまたタイマンでボコボコにしてやらなくてはならない。 当然ゲームの話だ。 翔が話し掛けてきて中断していた帰りの準備を終えてから今度こそ教室を出て、下校のチャイムや他の生徒達の駄弁る声の響く廊下を進む。残る靴の少ない下駄箱から自分の靴を取り、運動部の叫び声をバックに校門を出た後、真っ直ぐ自宅...では無く、自宅とは正反対の道を行く。
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