プロローグ

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 やって来たのは学校から少し離れたコンビニ、今日はここでのシフトが入っている。 まずは店長に挨拶する。 「店長-来ましたー」 裏口から入って、少し白髪の交じり始めた頭を視界に入る。 「おっ来たな。坂野さん、上がって良いぞ」 「はーい」 年齢的に同僚と言って良いのだろうか、女子大生の坂野さんがレジの応対を、今田さんは陳列棚の整理をしている。 「坂野さんと今田くんが帰ったら次は君と俺、二人だけだ。まぁ頑張ろうや」 「了解です」 こうして自分達二人はレジに立った。このコンビニは交差点に位置するし、お客さんもまあまあ来る。スタッフの人数は他店とそう変わらないし、二人だけなんて事はザラだった。 ーーーーーー ーーーー ーー 四時間程経った。今田さんは先に上がって自分はレジ番を、店長が品物を棚に入れる作業をしていた。前述した通り、このコンビニは交差点に位置しているから、車だとか人通りは少なくない。大体一人二人くらいのお客さんがいつも店内に居るのが普通だった。 しかしこの時は何故か車一つ無く、またお客さんも無かった。暗闇の中信号機だけが明滅を繰り返し、街灯が道に沿って連なっているが、それ以外に光源は存在せず、光の無い所はおかしいと思う程真っ暗闇。窓ガラス越しに見るその光景がとても恐ろしく、寂しかった。とても静かだった。 ピーンポーン 突如、コンビニの入店音がクーラーや機器の駆動音だけの店内に鳴り響き、思わず肩が跳ねる。驚きながらドアの方を向くと、やけに深くフードを被った人が入ってきた。フードの所為で性別などは良く分からなかったが、その時はただの寒がりなお客さんだと思って呑気に「いらっしゃいませ」と、いつも通りに応対しようとした。なんて馬鹿な自分、今は真夏だ。なのにその人物の格好を不自然にすら思わなかった。 その人は棚に並んだ品物を物色しようともせず、ただ俺の居るレジの前に立った。 「......えっ、と。なにかご用ですか」 少し様子が変だったので用心しながら聞くと、ソイツは上着のポケットから何かを取り出した。そして俺に“それ”を突き付けて淡々と、無機質な声でこう言った。 「金を出せ」
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