5人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、あった。」
私はお目当ての大きな流木の前で足を止めた。
砂の上にサンダルを置き流木に腰を下ろすと、もう一度空を見上げる。
月明かりがあるとはいえ、地上の灯りが少ないこの町では星が綺麗に見える。
「ふぅ…」
漏れた溜め息を夜空へ送ると、ジーンズのポケットから煙草を取り出した。体を風よけ代わりにして火をつけると、大きく息を吸い込みゆっくりと吐き出す。
白い煙は月を包むように立ち昇り、やがて風に掻き消されていった。
星に触れられそう。
散らばる星たちに向かって手を伸ばし宙を掴む。そして握った手をそっと引き寄せ静かに開いてみた。
もちろん星を掴めた事も触れられた事も一度もないが、この瞬間はなぜだかいつもワクワクする。
「こんばんは。」
突然、背後から低い声がした。
最初のコメントを投稿しよう!