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たった今自分のとった理由のわからない行動を打ち消すように、彼との会話を続行させる。 「ううん、大丈夫。・・・今から?」 私は彼が抱えているサーフボードを指して言った。 「うん。月が綺麗だからね。」 彼はゆっくりと月を見上げた。 つられるようにして私も空へと視線を動かす。 そこには、先ほど掴み損ねた空が変わらず広がっている。 月の光が優しく頬を撫でると、不思議な感覚に包まれた。 今出会ったばかりだというのに、彼とこの瞬間を共有する事が当然の事のように感じられ、それを心の奥が素直に受け入れている。 何がそうさせているのか。そんな疑問すら浮かばないほど、私の心は静かにその中にあった。     
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