25人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごめんなさい。ちゃんと此処に居る。ちゃんと…氏郷さんを待ちます。だからもう、誰も叱らないで…!」
瀬田に倣うように、細川が頭を下げた。
「ごめんなさい。」
二度、
「ごめんなさい。」
三度。
静かな庭先で、小さな謝罪だけが響き続ける。
「細川。」
四度目を紡ごうとした声を遮るのもまた、利休だった。
「武士が簡単に、頭下げるもんじゃねぇ。」
「……だって」
「言い訳も駄目だ。」
「…ごめんなさい。」
「手前ぇは何しに此処に来た。」
「なにって…。」
「自分で選べねぇ道なら、何処に居たって同じだぞ。」
「……。」
「一日だけ待つ。安土に戻るか…此処に残るか、きっちり決めて俺に報告しろ。」
瀬田と細川の間を通り抜けて、利休は屋敷に入ろうと再び石畳を鳴らし始める。
「……先生。」
「早過ぎたんだ、元々。例え帰ると言ったとして…手前ぇを責めんのは筋違いだろうよ。」
「腹切るなよ。」
静かに移り行く空気は無常に進む時間(とき)の所為だろうか。
何かを紡ごうとした細川をも再度遮り、利休はゆるりと屋敷に身を埋めた。
「……。」
最初のコメントを投稿しよう!