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そんな昔を経て、結局、細川は残る道を選んだ。
「うーじさーとさーん!」
「おや、今日はまたえらく御機嫌ですね。」
「穴場です!凄く美味しいお茶屋さん見付けちゃって!」
「其れは茶人として聞き捨てなりませんね。時間を作りますから、今度一緒に連れて行って下さい。」
「今度で良いんですかぁ?季節ものですから、次はもう違う味になっちゃいますよっ。」
「ええ、なるべく急ぎます。私としては、今すぐ出立したい所ですが…急に消えると姫にまた、叱られてしまいますから。」
くすくすと笑いながら。
あの日を生き抜いた武士は細川を優しく宥めた。
「じゃあ、明日!」
「善処しましょう。」
「やったあ!諸々は俺が準備します!あ、何なら冬姫様にも俺が取り次ぎましょうかっ?」
相変わらず、子供のように。
ころころと表情を変える細川は、既に事態が善い方向で決まった気で居る。
「私はどちらでも構いませんが…喧嘩になりませんか?」
僅かな懸念を紡ぐも、
「大丈夫ですっ!信長様に伝えて頂きますから!!」
変わらぬ細川の表情に、笑顔が僅かに深みを増した。
「火に油…ですか。では私も、其の火の粉を避けねばなりませんね。」
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