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ぺこりと小さく頭を下げて
小さな武士はそのまま、屋敷を後にした。
「……。」
牧村は暫く黙り込んだ。
特徴的な橙の癖っ毛が寂しそうに、靡く。
「俺から少し…話聞いときますわ。」
芝山が席を立つ。
「お願いします。」
静かに促したのは、瀬田の声だった。
擦れ違う様に部屋へ入って来た漆黒の男が、にこやかに場の空気を壊す。
「おや、皆さん。とうとう普段の行いを悔い改める時が来ましたか?」
「いいえ、少し…衝突してしまっただけです。」
再度、瀬田が答えた。
牧村はまだ、じっと何処かを見つめたままで居る。
「衝突。」
男は反芻しながら、首を捻った。
「…可笑しいですね。元々、気の合わない者同士の集まりなのに。」
紡ぐ目元が、笑っている。
「高山さん。」
「…失敬。傷付けてしまいましたか?」
「大丈夫です。」
漸く牧村の口が言葉を紡ぎ出した。
細川と然程変わらない背丈が、すくりと立ち上がる。
「僕も、話をして来ます。」
「お気を付けて。」
静かに去る足音を視界に入れる事も無く、高山と呼ばれた漆黒はその場に座した。
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