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「細川く…」
追い掛けた牧村は、すぐに足を止める。
言葉通りの不可侵を目の当たりにして、また口を噤んだ。
「忠興くんには…辛い話やったな。」
芝山が細川を側に寄せ、何度も小さな背を擦っている。
すっぽりと収まる小柄は、今度は人目を憚らず泣きじゃくっていた。
「如何してこんな所でお茶なんか飲まなきゃいけないんですか…!僕は、武士なのに!」
「皆、君を失いたないねん。」
「でも僕は…あの人を独りにする方が、ずっと怖い!」
「いつ死んでもええやなんて…本人が言うたんか?」
「…秘密。」
「……。」
「あの人の中にある…秘密。」
「中に?」
「本音…」
「何でそんなん、解るん?」
「…見えるの。」
「何が?」
「あの人の……こころ。」
「…心?」
「流れて…僕のこころに…入って来るんだ」
心臓の辺りを押さえながら
次第に過呼吸のように息が短くなる。
「ちょ、忠興くん。」
異常を認めた芝山だが
崩れ始めた細川を如何にも出来ず見守った。
耳を塞ぐ仕草。
本人の言う通り、自分に認め切れない何かが、入って来ているのだろうか。
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