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「うわ、またきっついの来たわぁ。」
手の出ない苦言に僅かな理不尽を覚えながら、芝山は思い切り細川の背中
―――丁度、心臓の裏の辺りを叩いた。
びくん。
六尺を超える長身から繰り出される圧力は、十二分に牧村の期待に応える形となり、本来の細川を呼び戻す。
「っ、……痛ぁい…。」
小さく紡がれる声。
息を切らしたままの細川は、そうしてその場に項垂れた。
「良かったよ、信長様に事情を吐かせておいて。」
安堵の溜息を吐く牧村。
「いや、吐かせるて。」
とんでもない口振りに、芝山はただ苦笑を溢した。
そして次には
「行けるか、忠興くん。」
しっかりと年下を気遣う。
その辺りで、庭先からざりざりと石畳を擦る音が聞こえ始めた。
「…せんせい」
細川が呟き、顔を上げる。
泣きじゃくった眼はまだ明々と紅蓮を灯していた。
「お帰りなさい、先生。」
牧村の出迎えに応え、やがて止まる足音。
最初に紡ぎ出されるのは、溜息にも似た舌打ちだ。
「馬鹿が……今度は何して遊んでやがった、芝山ぁ!」
「ええー!いきなり俺かい!!」
言うが早いか。
先生と呼ばれた巨体が、思い切り芝山の耳を引っ張り上げた。
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