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店からの帰り、僕達は行きと同じように電車に乗った。でも、おじいちゃんはわざわざ僕達と違う車両に乗るんだ。
「ねぇ、どうしておじいちゃんは一人で向こうに乗ってるの」
と側にいた家族に聞けば、あの人はあぁいう人なのよ、一人でいるのが好きなんだって、と返ってきた。おばあちゃんや父さんが言うんだから間違いはないハズだが、僕はそうは受け入れなかった。
いくらそんな性格なんだとしても、放っときなさいとか…。
(一人でいるのが好きなワケないじゃんか!)
小学生なりに単純ではあったが、僕も僕で頑固だった。
それを聞くと余計におじいちゃんの方へ行きたくなって、僕は人込みの間をすり抜けておじいちゃんのいる車両に移った。
おじいちゃんは窓の外を見ていた。
僕が来たのが分かると少しだけこっちを見て、また、さっきみたいに窓の外を見る。
僕とおじいちゃんは、ずっと黙って窓の外を見ていた。
すると、夜の空から何やら白くて丸いものが落ちてくる。確か、ちょうど雪にも色々な種類があることを知り始めた頃で、僕は隣に立っているおじいちゃんに尋ねた。
「おじいちゃん、これ、雪?」
「…んん?
いや、…あられだな。」
今になって思えば、何故一人で違う車両に乗る理由より先に、そんなことを聞いたのか不思議だ。
でもそれが、僕とおじいちゃんの交わした最後のまともな会話だった。
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