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俺は2年の第1走者だ。クラス対抗全員リレーとなると、やっぱり最初が肝心だろう。
「4組 井上 尚 第5レーン!」
5組、6組…と、クジで決めたレーンを発表する体育委員たち。当日に分かるってのがどうも納得いかない。
「たーかしっ」
「?」
声のした方向には、恭一がいた。でも、じきに周りが静まり返っていく。恭一は俺に向かって口パクで言葉を伝えた。
『 が ん ば れ よ ☆』
「……」
(言われなくても、頑張るっつの!腹立つんだよキザ!ばーか!)
あの、語尾に『☆』が付くような言い方がますます俺の神経に障る。
《位置に着いて――》
俺は頬を膨らませたまま、クラウチングスタートの姿勢をとった。放送部の言葉とともに、より一層静寂が深まる。自分の心臓の音だけが耳の奥で鳴る。
この、微妙に緊迫した空気が俺は好きだった。
…ドクン
…ドクン
《よぉーい!》
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