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《黒がアンカーに入りました、2組 龍野 恭一君!
続いて少しスピードが上がってきました、アンカー黄色は5組 村岡大輔君!
2人とも速い速い!!》
どうせ恭一のことだ、最後の最後に差を広げてゴールするんだろう。
「ちっ」
わざとらしく舌打ちをして目を逸らしたその瞬間(とき)だった。
「あぁあ…!」
どよめき落胆する観客の声。中には興奮も混じっている。
《おぉーっと、ここで黒が転倒!黄色が追い上げてきます!》
(え?!)
俺は驚いて顔を上げた。
「頑張れ龍野ぉ!」
「立て―――!!!」
黄色い声援を受け、擦り剥いたひざで走り出したのは、まぎれも無く恭一だった。あの整った顔に土をつけたまま、全力で走るのが見えた。
それでも間に合わなかった。
どんどん抜かされた。
(嘘だ……)
《六着、黒 2組でした。
以上で3年クラス対抗リレー競技は終了です。
アンカー走者にもう一度拍手をお願いします。》
何度も何度も得点板を見た。それでも順位は変わらない。
恭一は、びりだった。
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