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ミスティは、仕事に走り出し、今日は映画の発表会の記事を頼まれている、昔の映画にありがちな濃いラブシーンや殺人事件など。
(ふむふむ)
メモを取ったり評価を書いたり、映画を見るのも楽じゃない。
今回のグランプリは『ラプンツェル少女』に決まりね?
ラプンツェル少女は髪の長い内気な女の子が男と恋に落ちる話である。
見せ方もうまい、話の構成も完璧、女優の演技だって最上級だ。
案の定グランプリは『ラプンツェル少女』だった。
(私の目は確か見たいね)
早帰りして時計塔に寄る。
「それで、今日の仕事は映画の品評会」
「大変ですね」
「グランプリの映画は面白かった? 面白いなら僕も見たいな」
「え~と」
あんな濃いラブシーンの映画見せられないわ。
「いまいちだった」
「なーんだ、ならいいや」
「そ、それより今度は、どんな発明を?」
「今日は修理の日、時計人形達はよく壊れるから」
「ふ~ん」
お茶を飲みながらジョンの動きを眺めながら話す。
ガチャガチャとギアを直す音が鳴り響き、ころころ回る、お喋り時計人形を捕まえて。
「私、新聞記者、向いてる?」
「ええ、もちろんですよ」
お喋り時計人形はあんまり否定的な言葉をプログラムされてないのか大体が欲しい答えで答えてくれる。
ちなみにオカメちゃんと言うらしいとジョンから聞いた。
ころころとまた回す。
「おやめください」
この機能は一体何のために着けたのだろうか?
「まあまあ、お菓子でも」
お茶受け時計人形だ。
「ありがとう」
「それは、お菓子用時計人形が作ったカップケーキです」
「そんなのもあるんだ」
時計人形の微妙な会話にも慣れてきたものだ。
配線コードに引っ掛かり転びそうになったのだが青年時計人形に抱きかかえられ助かった。
「ありがとう」
「どういたしまして」
抱きかかえられたまま、青年時計人形の顔を見て、ミスティは、こう思った。
(やっぱり人間だったらタイプなのに)
ジョンはと言うと。
「大丈夫だった? コードはさ、今度は出来るだけ転ばないように加工するから」
「うんうん」
好意はうれしいのだが……。
「だから僕の事……」
「ごめん」
いつもこうだ、隙あらば付き合わせようとする。
「マスター、ファイトです」
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