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その時――――
『パシャ!』『パシャ!』
と、シャッターを切る音が数回聞こえてきた。突然のことに慌てて音のなる方へ振り向くとそこにはAKIさんの姿。
「何をそんなに一生懸命に祈ることがあるの?」
AKIさんは不思議そうに訪ねてきたが、カメラの向きを私から変えようとせずに、さらにシャッターを押そうと構えるもんだから、私は咄嗟に俯いた。
だって、
撮られるのはあまり得意じゃない。
まるで、私のそんな行動がお見通しだったように「やっぱりその反応か」と言って笑った後、更にこう続けた。
「カメラを向けられて、得意になるタイプじゃないのは、第一印象から分かっていたよ」
相手を観察し、更に分析するのは職業柄なのかな?何か見透かされているようで、慣れない私には居心地が悪い。
そう思うのは……AKIさんが、タケルのお父さんだということがはっきりしたから、尚更だ。
でも。あくまで今日は仕事なのだから。
きちんと切り替えなくては。
「あ、あのっ! 今日一日よろしくお願いします」
深々と頭を下げて挨拶をした。
「よろしくね、川澄さん」
そう言って差し出された手を思わず、ジッと見つめた。
あっ、骨太な手の感じが、タケルと同じだ。
そんなことを考えていたから、なかなか手を出さない私を見て、AKIさんは「そんな警戒しなくても」と笑う。
「す、すみません。緊張していまして」
「じゃあ、まずは。良い仕事をする為にも、お互いの緊張をほぐそうか? 少し話でもしよう。
教えてくれない? さっき何を祈っていたのかを。時間にしたら、結構長かったよ」
その台詞を聞いて、しばらくの間AKIさんに見られていたんだと分かった。
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