1855人が本棚に入れています
本棚に追加
「あっつ……い……」
まだ梅雨時の6月だと言うのに、今日は朝から蒸し蒸し、ジメジメ……
夕方になっても、顔にじんわりと汗が浮き出るのを感じる気温だった。
自宅から、いつもの河川敷までは徒歩5分。一番近くのスーパーは河川敷の反対側だけど。
私は、散歩がてら……と思い、河川敷の先にあるスーパーへ向かって歩き出す。
ん?
少し歩くと、
賑やかな声の集団に気づいた。
「おねーさんっ!」
「おーーっい!」
あれは……私の天敵。憎き、小学生。
河川敷の上を歩く私に向かって、子ども達数人は下から体全体を使って手を振っていた。
「おねーさーん!」
そう何度か呼ばれたと思ったら、いつの間にか、目の前に男の子が2人立っていた。
「おねえさん、この前はごめんね」
「そうそう、笑ったりして」
まさか、この子達から謝ってくるなんて思わなかった私は、不意打ちを食らったようで、返答に困ってしまった。
「タケルにさ、俺達みんなすげー怒られたんだぜ」
「怒るとマジ恐いんだよ、タケルはさ」
ん? ……タケル……?
それは、恐らく、
魔法の足の持ち主であろう名前。
「おねえさん、本当ごめんなさい。あんな風に笑ったりして」
あまりに素直に自分達の非を認め、頭を下げた彼らを見ていたら、大人気なく、腹を立てて、卑屈になった自分が恥ずかしくなる。
「いや……私こそ、ごめんね」
と、ボソリと口に出してみた。
最初のコメントを投稿しよう!