ー接近ー

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それから1時間ほど私はその場に座り、彼らのサッカーを見ていた。 時々「喉が渇いた!」と、私の側に置いてある水筒を飲みに子ども達が戻って来るが、1口、2口……ゴクゴク飲むと、またすぐにプレーを再開しに輪に戻っていく。 本当に、サッカーが好きなんだな。 一人っ子で育ったし、親戚にも小学生位の子どもはいなかったから、身近に見る子ども達の笑顔は何だかとても新鮮だった。 ふと、時計に目をやると17時。 あっ、もうこんな時間。 携帯も持たずに来ちゃったし、 お母さん心配してるかな…… 帰ろうと立ち上がったその時。 「おねえさん、帰るのー?」 そう声をかけてきたのは、まさる君。 「うん、もう帰るね」 私がそう答えたら…… まさる君は何故かニヤッと笑い、私の腕を掴み、またぐいぐい引っ張り、グラウンドの中央へ連れてきた。 「おねえさん、鐘が鳴るまで、あと30分あるから! ラスト一緒にやろうよ!」 と、何とも輝く笑顔で私を誘う。そのまさる君の一言が、周りのみんなにも火をつけたようで… 「やろう! やろう!」 「サッカーは見てるより、やった方が楽しいから!」 「俺たちとチーム組んで、タケルをやっつけようぜ!」 そう言ってワイワイ盛り上がる子ども達。 その横で、まるで知らん顔のアイツは、 リフティングを繰り返すだけ。 「いや、あっ…… ごめん、私……出来ないよ」 大盛り上がりの子ども達には申し訳ないけど……私には無理だもん。 「いいじゃーん! 30分だけ!」 「じゃあ、15分!」 子ども達は、なかなかOKを出さない私に向かって土下座までしてくる始末。
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