『未来へーー』

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あっ、そうそう。あのね。 バンコク出発の三日ほど前に、タケルから珍しく国際電話があったの。 理由は、もちろん…… 私がメールで「AKIさんというカメラマンさんと一緒に仕事します。バンコクへ撮影に行きます」と打ったから。 久しぶりに聞く、あなたが話す『もしもし』というその声だけで、私はノックアウト寸前の思いだった。 『ひまり? 元気してた?』 「うん、タケルは?」 『元気な訳ねーじゃん、お前が側にいないんだから。もう、充電切れ。欲求不満すぎ』 もうっ、早速そんなことばっかり言うんだから。って、思いながらも。 私も、おんなじ。 タケル不足だよ。 そんなことを考えていたから、タケルの呼びかけに気付かずにいたら、 『………おい! 聞いてんのか!?』 そんな呼びかける声。 「……あ、ごめん」 『全く、相変わらずだな』 ため息混じりの声に続いたのは、もちろんAKIさんのことだった。 『親父に会ったんだ?』 ……あれ? サスペンスを見る時に犯人を先に口にしてはいけない!って暗黙的ルールを、平気で破るかのように、 私がずっと確信に触れて良いのか迷っていたことが、バカバカしい位にタケルはそう言った。 おまけに『親父によろしく言っといて』と、それだけ言った。 何か、拍子抜けしちゃうよ。 でも、これでスッキリした。 そしてタケルは、所属チームのこと、ドイツでの生活のこと、なかなかドイツ語が覚えられないことを冗談を交えながら喋り倒した。
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