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ずっとメールだけで過ごしていたから、最初は電話を通して、タケルの声が聞けただけで、私の心は満たされて行く気がした。
でも。10分ほど話して、その声に満たされてしまうと、欲張りになる。
顔が見たい。
あの大きな手に包まれたい。
その頬に、唇に触れたい。
そして、
私の全てに触れて欲しい。
そう思うのは自然なことだ。
だって ――――
『タケル不足』なんだから。
私も、充電切れだよ?
ドイツとの遠距離になってから、半年以上が経ったが、2人が同じ気持ちでいることが、私を慰めてくれた。
タケルも同じ気持ちを抱えながら、頑張っているんだからってね。
『めちゃくちゃ、会いてーな』
まるで、テレパシーが伝わったようなそんな台詞が囁かれる。
タケルのその一言が、合図だったように、私達は寂しさを言葉にして埋め合った。
「うん。会いたいね、すっごく」
『だな。顔が見たい。お前に触れたい。すぐに会いに行きたい』
「私も同じだよ? タケルに会いたい。触れたい。触れて欲しいって思ってる」
『珍しい。随分と可愛いこと言うじゃん。エライ、エライ』
そう言って笑う声が受話器から聞こえた。
離れている距離があるからこそ。言わなくちゃ。ちゃんと伝えなくちゃ。
それでいて、あなたの寂しさを少しでも埋めてあげられるなら、私も何度でも言うよ?
「……タケル? 今日も、明日も、その先も、ずっとずっと大好きだからね」
そう口にしたら、タケルは、
『これで、また明日から頑張れるよ』
って言ったんだ。
そして。電話を切る時に、
『ひまり、キスしようか?』
って言ってきたタケル。
私はもちろん意味が分からない。
だって、電話だよ?
お互いの唇はこんなにも離れているのに?
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