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言った意味が分からなかったけれど、私はタケルの言う通りにしてみた。
だって。嘘でも幻でもいいから、
私もキスしたい。
『俺の合図で目閉じて。それから画面にそっとキスして。ちゃんと、俺のこと想いながらだぞ? それが大事なんだから』
なんて、乙女チックなことを言ったタケル。
これが、ドイツとの遠距離恋愛ではなくて、こんなにも会えない日々が切なく感じてなかったら、恥ずかしさに負けて、そんなこと出来なかったかもしれない。
でも。
『ひまり、キスしようか』
優しいその声で甘く囁かれたら、私が静かに瞼を落とすのは、自然な流れで。
あなたを想いながら、
そっと唇を落とす。
不思議……
絶対にあり得ないはずなのに、
触れ合える唇の距離にはいないのに。
でも、
唇が熱く感じるのはなんでだろう?
嘘のキスなはずなのに。
でも、私には嘘には思えなくて。
離れ難い唇は、
「……タケル、もう一回」
と、その不思議な感覚をもう一度確かめたくて。キスのおねだりをすると、
『いいよ。何回でも』
そう言って、私達はまるでシンデレラがかけられた魔法のように、
何度も、‘‘ キス ’’ を繰り返した。
それから、
『ひまり、愛してるよ』
と、タケルから囁かれたその言葉を聞いてから、私は携帯を切った。
こうして私は、久しぶりにタケルの深い愛に包まれて、幸福感に満たされながら、眠りに着いた。
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