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それから撮影の間、AKIさんはカメラを構えると、まるで獲物を狙うかのように、瞬きすらしていないんじゃないかと思う位、被写体であるひまわり達を鋭い視線で追い続けた。
さすがに、調理器具の揃わないこの場所で、本当にシートの上に料理を並べることは不可能だった為、その部分だけは、帰国してから別撮りをして合わせることにした。
AKIさんは時には地面に寝そべり、青空を仰ぐようにカメラを構える。時には、急に何かを思い立ったように、ひまわり畑に走り出したり。
その真剣な眼差しに尊敬の念を抱いて見ていた私に、真木先生が隣で、
「あの人、カメラを持つと子どもみたいでしょ」
と笑う。AKIさんを見つめる真木先生の瞳が、あまりにも輝いているから、私はこのまま、何にも言わないでいることに、ひどく罪悪感を感じて、
「AKIさんは、私の彼のお父さんなんです」
と、伝えたけれど、真木先生は驚くこともなかったの。意外な位、飄々とした態度のまま、
「あら! そうなの!? 世間って狭いわね!」
と言う。
私は居た堪れない気持ちを抱えたまま、そんな先生を見つめることしか出来なかった。
でも真木先生は言う。ハッキリした言葉で。
「ひまりちゃん。変に気を使わせたかしら? ごめんなさいね。AKIさんが、今だにあなたの彼や奥様を想っていても。
私の気持ちは変わらないから。私はあの人のこと、好きだから」
と、言う。そして、真っ直ぐに地面に寝そべるAKIさんを見て微笑んだ。
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