ヤキモチの答え

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タケルがね。サッカーに関しては、多くを語らないのはいつものこと。それはドイツに行っても同じ。常に日常会話ばかりをメールでやり取りするだけだったんだ。 私も必要以上に、聞いたりもしないから、余計に分かっていないのだけれど。 だから私にはそれが、どの位すごいことなのかよく分からなかったけれど。『日本代表』という言葉を聞くに、日本の代表ってことでしょ? 日の丸を付けるってことでしょ? うん。 それってすごいことだよね。 そのことが、ただ事ではなくて、とってもすごいことで、名誉あることなんだって、改めて実感したのは、その後にかかってきた、神崎さんとすみれさんからの電話。 私には分からないことを物凄い勢いで説明してくれた。 リビングに降りると、お父さんがスポーツ新聞を広げて興奮していた。 そう。わが家に挨拶に来てからも、タケルはその後も幾度となく、顔を出してはお父さんの煩い小言に正面から向き合ってくれて。 少しずつ、少しずつ、打ち解けて。 あんなに熱心な野球ファンだったのに。 今じゃ、新聞や雑誌に載るタケルの記事をスクラップブックにまとめるほどの、サッカーファンに。 いや、松本タケル選手の立派なサポーターになってしまったんだ。 そのことは、もちろん嬉しい。 タケルのことを、私の家族みんなが好きになってくれるなんて、嬉しくないはずがない。 「ひまり! 松本くん、やったな!」 ハサミで丁寧に記事を切り取るお父さん。鼻歌まで出てきて、これは相当ご機嫌みたい。 「お母さん! お母さん!」 そう言いながら、切り取った記事を持ち、キッチンへと向かって行ったお父さんの背中を眺めた。
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