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そして。その翌日、ドイツからのエアメールが届いた。中に入っていたのは、先に行われる国際親善試合のチケット。
チケットが4枚とメモ……
メモには『観に来い』の4文字。
相変わらずの短文に、笑いが出た。
もう、他に言うことないのっ!?
「会いたい」とか、
「好きだよ」とか、
あっ、でも。そういうタイプじゃないよね。なんて一人で納得した私は、そのメモを見てまた笑いが溢れた。
それから――――
「今回の試合はね。若手を中心に組まれた代表招集で。W杯予選が絡むような、本当に大事な国際試合に出るのは、更にもっと大変で。
今回の代表招集とは、違うメンバーがすでにいるんだよ。そこのメンバーを蹴落とすのは、実績・経験を積んでからこそ。
上にはまだ上がいてさ。それ位、頂点にいる代表メンバーはすごいってこと!
だから、松本は試されてるって訳。この代表招集をステップとして、結果を出さないと、次に這い上がる道はないってこと」
スタジアムに向かう電車の中、皐月は、サッカー初心者の私達親子に説明をしてくれている。
「皐月ちゃんは、本当に詳しいなぁ!」
感心しながら、お父さんは何度も頷いた。
「まっ、初めての代表戦でも。あの男ならやってくれるでしょ? 緊張もしてないでしょ?」
皐月が私に向き直り、そう聞いてきた。
「……それは、私には分からないよ。本人とは全く話せてもいないし」
そうなの。タケルがチケットを送って来てくれてから、メールでお礼も伝えたが。
返信も、連絡も、ないまま今日を迎えている。
だからかな?
タケルが日本にいることさえも、私にとったら半信半疑なのだ。
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