運命の始まり

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「ごめんなさい」 深々と頭を下げて、 相手の顔をなるべく見ないように、くるりと背中を向けその場を去る。 そして、立ち止まることなく、呼び出された屋上の扉を開けた。 「ひまり!」 そう私を呼んだのは親友の皐月。 「皐月! 迎えに来てくれたの?」 「そっ! 無事に断れたか心配だったから、あの先輩には悪いけど、こっそり付けて来ちゃった」 罰悪そうな顔をしながらも、白い歯を見せて笑う彼女は私の親友。 高橋 皐月。 高校入学時にたまたま隣の席に座り、意気投合した。 私の体のことを全て知っても、同情しなかった。 反対に同情するどころか、 「でも! 今、生きてて良かったじゃん」 って笑った。 私が素でいられる数少ない、大事な友達。 ふと、皐月が考える仕草をして 「ってか、ひまり。今月に入って告白されるの何人目?」 と、聞いてきた。 そう……私は、異性からはモテた。 皐月が言うには、「男受けする顔」とか言うんだけど、 意味が分からない。 身内からはね…… 「両親の良い所を全て貰ったのね」 なんて、よく言われるこの顔。 あとは、病気のせいで、ひ弱なイメージが男子の同情を誘うのか…… 私にとっては、ありがた迷惑な話。 こうして告白されることも珍しくなかった。 でも。異性に好意を持って貰える女子は、決まって同性からは嫌われる方程式が成り立つもの。 私も、例外ではない。 だから、皐月は数少ない友達であり、 心許せる親友なのだ。
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