運命の始まり

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皐月と2人で屋上を後にして、教室へ戻った。 「5限って何だっけ?」 そう聞きながら皐月は、一気飲みしたパックジュースをゴミ箱に投げた。 時間割に目を移すと……体育 【体力測定】の文字。 「やった! 体力測定だ!」 皐月はガッツポーズをする。 体力自慢の皐月は、女子サッカーのチームに入っている。目指す夢は大きく、なでしこジャパン。 健康的に日焼けした小麦色の肌は、普段の練習の成果だ!と豪語する。 羨ましい。その一言。 キラキラした表情で話す皐月は、私の憧れそのもの。 試合や練習の応援に行くと、皐月はグラウンドを駆け回り、真っ直ぐな視線でゴールを見据え、ボールを追いかける。 自分では決して叶えることが出来ないけど…… でも。皐月を見ながら、まるで自分自身が、走り回り、運動する幻を重ねることが、私の毎日の楽しみだった。 「ひまり! しっかり見ててね! 今年こそは、男共には負けない記録を残すから!」 そう笑いながら、皐月は校庭の真ん中へ走り出した。 そんな皐月の後ろ姿を見ながら…… 私は、いつもの定位置へ。 春には満開の桜が咲く、この大きな木の下が体育の時の指定席。 ここから、一週間に2,3回ある体育の授業を過ごす。 小学生の時も。 中学生の時も。 そして、高校生の今も。 体育すらしたことない私。
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