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あの日の、2泊3日の京都旅行。
僕も恭平も、恥ずかしかったからか。
どちらとも恋人と公言しないまま、なんやかんやで一つ学年が上がって。
つい先月まで、僕は今まで暮らしてたアパート。恭平は大学の学生寮。
別に一緒に暮らすとか同棲とか、そういうのが嫌だったわけではない。
でも何となく、契機が欲しかった。
区切りというかそういうものが。
そうは言っても、電話なしのメールなしではなかった。
下らない話ではあったけど、時々そういうこともしていたし。
(恭平の場合はほぼ毎日だったけど)
だから、会いたいだの一緒にいたいだの。
いつもうるさいくらいに言ってくる後輩を突っ返して、今日。
こうして肉体労働に励んでいるのだ。
「佐野サン、このソファってこっちで良いんですか?」
「あぁ、そこに置いといて」
ダンボールに詰め込んだ食器を取り出して食器棚に並べ終えて、額の汗を拭う。
今までよく料理はするからある程度準備していたけれど、これからは僕ひとり分じゃなくなるから。
用意するものも、こうして整理するのも一苦労だ。
一息つくようにリビングの方へ目を向けると、部屋の真ん中には新品のソファ。
隅にはまだ開けられていないダンボールの山。
これを片付けるには今日一日かかるだろう。
恭平に頼んで、さっき壁にかけてもらった掛け時計。
(こういう時だけは本当に頼りになる)
気づけばもう午後3時を回っていた。
時間の経過に驚いてそろそろ休憩しようと、
声を掛けようとして振り返ればそれと同時にはしゃいだ声が聞こえる。
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