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「でもお前、花より団子って感じだよな」
「まぁ、そうですけど。でも俺団子よりステーキとかハンバーグの方が良いです」
「お前さ、絶対日本人じゃないだろ」
感性が極端にズレてる。
口元から笑みが消えて、溜息を吐きながら言ってやると不思議そうな顔をされた。
「でも俺、英語苦手だし…」
「そういうことを言ってるんじゃない」
聞こえた言葉を無理やり遮って、キッチンまで戻ると冷蔵庫からペットボトルを取り出す。
炭酸飲料の定番、コーラ。
(最低1本は冷蔵庫に入ってて、いつ補充してるのか分からないけど、恭平曰く必需品らしい)
それを窓際に突っ立っている長身に投げてやると、慌てて腕を差し出す。
寸でのところでキャッチして――でも、僕の言動に苦言を零した。
「佐野サン、炭酸振って寄越すなんて性悪すぎですよそれ」
「うるさい。せっかく掃除したんだから床汚すなよ」
珈琲を淹れてソファに座ると、文句を言いながらも当たり前のように僕の隣に腰を下ろす。
まだソファとテーブルとテレビしか置いていない、殺風景な部屋の中。
窓から差す木漏れ日に瞳を細めて、朝から動きっぱなしの身体を労わるように背凭れにもたれかかる。
そっと隣を見やると目が合って、心底嬉しげに微笑まれた。
いつも見ている見慣れたものだけど、いきなりこんなことをされてもすぐ返すことなんて僕にはできない。
だから取り繕うように口から出る言葉。
「そんなのばっか飲んでると体に悪いだろ」
「え?でも俺骨溶けたことないですよ」
「お前…その歳にもなってまだそんなの信じてるの?」
確かあれはただの迷信というか、親が子供の為に吐く嘘というものだ。
それを疑いもなく信じているあたり、なんというか。
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