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その一言で緊張の糸がぷつっと緩んだのか、姫は座り込んでしまった。
「あの――。
おゆうに付き添ってくださってありがとう」
教幸に頭を下げ、そして、はっと顔をあげた。
「あ、今更ですけど、
お二人に怪我させたりということはありませんでしたか?」
「ええ、全く」
教幸はどぎまぎしながらそう応えた。恋愛過多の傾向にある教幸は、既に自分がこの姫に心奪われてしまったことを自覚していた。
「それは良かった」
姫はほっとして僅かに笑みを浮かべると、憮然とした表情で手持ちの布を手に巻いている寿親を見上げた。
「あなたも――」
「ああ。問題ない。
この傷のことなら気にするな。すぐに治る」
寿親はさらりと言った。
すっきりした一重の目元を、僅かに緩ませ微笑んだ。
驚いたのは、姫ではなく教幸だった。
この男が、ほぼ初対面のしかも女性に僅かとはいえ微笑みかけるなんて――
前代未聞の事態を目の当たりにして、教幸の胸に悪い予感がよぎって行った。
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