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ぞくりとした恐怖が、教幸を貫く。じとりと手に滲んだ汗を、ぎゅっと握りしめた。
そうして、重くのしかかる空気を取っ払うようにいつもの人好きのする笑みをその顔に浮かべた。もともと下がり気味の眉尻が、さらに下がる。
「いいよ、寿親。
今までだっていくつか一緒に行動してたのも、損得あってのことじゃない。
そんなのとっくにわかってると思ってた」
年上の教幸でありながら、あまりにも無邪気にそう言い放つので、寿親の中で張りつめたものが急激にしぼんでしまった。
「あのな……。
そう単純なもんじゃないだろ。
今からあの宮中でのしあがっていくべきなんじゃないのか」
やけ気味にそう言い放つ。
「何故そう複雑にする?
いいじゃないか、寿親。
一人の人間に出来ることなんて、限られてるもんだ。
俺は、いつも目の前のことを一番大事にする人でありたい。
そのせいで、将来がどうなろうと知ったことか」
「――ああ、そういう奴だったな」
寿親はそう言い、強めの酒を一気に煽った。
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