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 深い眠りから目覚めた二の姫は、ふらりと起きあがって部屋を出た。  外はまだ、日が明けきる前で赤色とも橙色とも紫色とも名付けられぬ、幻想的な色に染められていた。  中庭を望む廊下で、その景色を見つめている青年を見つけ、姫は思わず足を止める。  昨日は色々あってそれどころではなかったのだが、改めてみると、まるで絵巻物の中から飛び出してきたように浮世離れした美しさを持っている人だと思った。 「おはようございます、姫君」  青年は音もなく振り向いて穏やかに言った。 「――おはようございます。  お休みになれなかった――とか?」 「いえ。  早く目が覚めただけなのでご心配なく」 「あの――お名前、と言うか――。  なんてお呼びすればいいかしら?」 「寿親(としちか)と」 「わかったわ。  でも、私は――名前で呼ばれるのは少し、嫌で――」 「では、宇治の姫――。  いや、姫さえ嫌でなければ、朝姫とお呼びしたい」 「え?」 「丁度先ほど、この朝焼けを見て、貴女の御髪(おぐし)のように美しいと思っていたところなので」  挨拶と同じくらいにさらりとそんなことを言うので、かぁと姫の頬が朱に染まった。  同時にドキドキと、胸の中が煩く騒ぐ。
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