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それにしても、長い時間抱き寄せられているので徐々に心臓も落ち着いてくる。
「あの……。
いつまで、こうしてるの?」
戸惑う朝姫に、寿親は余裕のある笑みを浮かべて見せる。
「嫌?」
とっさにぶんぶんと首を横に振ってしまい、それが意味することに気づいて、再び姫は頬を赤らめる。
「あまりそうやって、私を煽らないで」
くすくすと寿親が笑う。
その息がまた首筋に触れ、ぞくぞくとした未知の何かが身体の中を這っていく。
姫は、誰かと文を交わしたことさえないのに、こんなことになってしまったことに戸惑いと動揺が隠せなかった。
それを宥めるかのように、寿親が愛しそうに髪を撫でる。
姫はただおとなしくその胸の中に顔を寄せておくほかないのだった。
「寿親、先ほどのアレ、燃やしたらカエルの死骸が――」
言いながら部屋に来た教幸は、二人の抱擁を目の当たりにして自分の方が顔を赤らめ思わず視線をそらす。
「……寿親、こんな時に何をして……」
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