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「身固めの術を知らぬのか?」  動揺している教幸に向かって、寿親は冷めた口調でそう告げた。 ――みがための、じゅつ――?  その言葉を口内で噛みしめたのは、教幸だけではなかった。  朝姫もまた、首を傾げたい想いだった。 「あちらが、強硬手段で結界を破りにきたのだから、こうして姫本人を護るしかないだろう?  こうしているのが一番確実だ」 「そうか」  教幸はどこか、ほっとしたように息を吐いた。  朝姫は寿親の胸の中から顔をあげることができなかった。  その言葉に、ひどく落胆している自分に気が付いたからだ。  勝手に舞い上がって好きになってしまっていたけれど、相手はそうではなかったようで―― ――そうよね。   初めて逢う私を愛してくれるなんて――絵巻物語の読み過ぎだわ。  心の中で切ないため息を吐くと、その後はなるべく自分の感情を押し殺すようにしながら寿親に身を任せたのだった。
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