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 その優しい仕草に勝手に心拍数が跳ね上がる。  でも、これも術のうちなのかもしれない――。  姫はそう自分に言い聞かせると、雑談をしようと唇を開いた。 「この髪、以前は短く切っていたの」 「ご自分で?」 「ええ、どうせ人前に出る時は鬘をつけるのだし、問題ないと思って。  短刀でざくざくと切り落としていたわ」  姫は懐かしそうに眼を細める。 「でも――。  一人だけ、その髪をもったいないって言ってくれた方がいたの」  不意に、姫の口調に懐かしさ以上の感情が混ざったのが、寿親にもわかった。 「綺麗な髪なんだから、伸ばせばいいのに――って」 「そう――」  相槌を打った寿親の中で、二人の話が綺麗に重なる。  東宮が幼い頃の思い出を大切にしているように、姫もまたその時のことを鮮明に覚えて心の中で大事に想っていたのだ。 ――その方のことを今でも愛しく想ってる?  さらりと聞いてみればすむことなのに、どうしてもその一言が口に出せず、寿親はそんな自分のことが心底不思議で仕方がなかった。
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