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「だから、貴女は鬼ではない」
たしなめるように言われて、かちんときたのか姫は声をあらげた。
「鬼じゃないとしても――人でもないの。そうでしょ?
私にはみえるのよ。
先のことが。
――夢で。
いつもそれを話すとお父様が褒めてくれるから、良いことなんだとばかり思ってた。
まだ、幼くてそれが先のことを見ているとも知らなかった頃の話よ。
だけど――
その夢のせいで私は――人を殺めてしまったの――」
先ほど、雑談をたくさん交わして少しは心安くなっていたせいか、姫は今まで心の奥に抱えていた想いを吐き出すように一息で言った。
「人を殺すなんて、鬼の所業よ」
寿親は俯いた。胸にこみ上げた黒いものをごくんと奥に飲み込む。
「どうやって、二人も殺めた?
幼い女の子が、一人で」
それは、全ての感情を無理矢理殺して絞り出した、低く冷たい声だった。
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