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 教幸は寿親の元へと急ぐと、床に臥せっている寿親を軽々と抱え上げ寝床に置いた。  医療の知識はないものの、熱くなっている頭を水に浸した手拭いで冷やす。  ふっと、寿親が目を開けた。  心配そうな顔で自分を見つめている二人を見て、ふっと薄い笑いをもらした。 「心配ない。  少し――気が抜けただけだ。  寝れば治る」 「食べ物と、酒を持ってきたが――」 「ありがたい。  姫、本日はここで休ませてもらっても?」 「ええ、どうぞ。  ごゆっくり」  ぎこちなく言って立ち上がろうとする姫の手首を寿親がぐいと掴んだ。  ぐったりしているとは思えない強い力にびっくりする。 「まだ、安心は禁物だ。  できればここに居てほしい。  間違っても、この屋敷から出ないでくれ」 「――わかったわ。  所用をすませたらここに戻ってきます」 「待ってる」  ふわりと口元に浮かべられた笑みは、まるで愛しい恋人に向けられたもののようにしか見えなくて、またしても姫の心拍数は跳ね上がってしまうのだった。 ――そうじゃない、はずなのに――  自分に必死にそう言い聞かせながら、姫はそこを離れた。
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