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あまりにも軽くそう言ってきたので、教幸は一瞬、何の話かわからなかった。
「人を呪殺するというのはそういうものだ。
呪い返されれば、返り討ちにあう。
もっとも、呪殺でなくともそうだろう?
人を殺そうとして、逆に殺される――なんて話、珍しくもなんともない」
当たり前のことをごく自然に説明する口調で、寿親が言う。
もっとも、それは普段の寿親の態度としては当たり前で、むしろ
「とはいえ、さすがに姫にそれを説明する気にはなれなかったけど」
などと照れたように付け加えたことの方が、教幸にとっては驚きだった。
「それは、左大臣の身にも何かが起こってる――ということなのか?」
「もしかしたら、少しくらいは――何かできているかもしれない」
嬉しそうにそう言った直後、寿親は口元を引き締める。
「もっとも、姫がそれを望んでいるかどうかは――わからぬが」
困ったように言うと、疲れていたことを思い出したかのようにぱたりと寿親は臥せってしまった。
「朝まで休ませてくれ」
そう言われると、それ以上の会話を続けるのも申し訳ない気がして、教幸は寿親をおいて部屋を出るほかなかった。
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