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 姫は、その顔に緩やかな笑みを浮かべた。  それは、儚さと楽しさをないまぜにしたような、見たものを切なくさせる笑みだった。 「あの方は、今まで倒れられたことがないのでしょう?  でしたらやはり私のせいだわ」  彼女はそっと、自分の緋色の髪に触れた。 「あの方は否定してくれたけれど、やはり、私は鬼なのよ。  だから、関わる人皆を不幸にしてしまう。  乳母を殺し、陰陽師を殺し、――そして、おゆうも殺めてしまった。  みてたでしょ?  今度は、あの方やあなた様のお命を奪ってしまうことになりかねない。  そうでしょう?」  感情を押し殺して絞り出した声は、教幸の胸が痛くなる。 「俺が見た限り、おゆうさんを殺めたのは姫ではありませんよ」  精いっぱいの慰めは、形容できないほど切なさのあふれる笑みに一蹴された。 「直接手を下してないから?  おゆうもそう言ってくれたわ。  だけど――  そもそも、私と関わってなかったらっ――」  抑えきれない感情を載せ、そう口走った姫は我に返ったのか言葉を切ると、涙が零れそうなほど潤んだ瞳をぎゅっと閉じた。
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