506人が本棚に入れています
本棚に追加
姫は、その顔に緩やかな笑みを浮かべた。
それは、儚さと楽しさをないまぜにしたような、見たものを切なくさせる笑みだった。
「あの方は、今まで倒れられたことがないのでしょう?
でしたらやはり私のせいだわ」
彼女はそっと、自分の緋色の髪に触れた。
「あの方は否定してくれたけれど、やはり、私は鬼なのよ。
だから、関わる人皆を不幸にしてしまう。
乳母を殺し、陰陽師を殺し、――そして、おゆうも殺めてしまった。
みてたでしょ?
今度は、あの方やあなた様のお命を奪ってしまうことになりかねない。
そうでしょう?」
感情を押し殺して絞り出した声は、教幸の胸が痛くなる。
「俺が見た限り、おゆうさんを殺めたのは姫ではありませんよ」
精いっぱいの慰めは、形容できないほど切なさのあふれる笑みに一蹴された。
「直接手を下してないから?
おゆうもそう言ってくれたわ。
だけど――
そもそも、私と関わってなかったらっ――」
抑えきれない感情を載せ、そう口走った姫は我に返ったのか言葉を切ると、涙が零れそうなほど潤んだ瞳をぎゅっと閉じた。
最初のコメントを投稿しよう!