初恋は突然に

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女を否定される要因の一つにもなったこのゴツい黒縁メガネ。 こんな時、皮肉なことに役に立つ。これがあれば泣いた目も目立たない。 鏡に向かってウンと一つ頷き、私はトイレから出た。 フロアに戻る手前の通路。 背の高い仲村が腕を組み壁にもたれた姿勢で私を見下ろしている。 「泣いてたのか?」 なんで? よくよく見なきゃ分からないはずなのに・・・。 私は即座に仲村から顔を背けた。 「泣いてなんかないわよ。話しかけないで」 「会社じゃちょっかい出さない約束だったな」 「そうよ」 私は急いで仲村の前を通り過ぎた。 再度言葉を被せてくる気配は無い。 良かった・・・。 泣いてたことをしつこくからかわれたら、更にブルーになる。あっさり解放されたことにホッとしながら、私は席に戻った。
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