初恋は突然に

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それから数日は、仲村が私に絡んでくることは無かった。 からかうのに飽きたんだろう。 怒ってばかりで、可愛い反応の一つも返す訳じゃない。 見た目も・・・だしね。 今朝も特に何も言って来なかった。 私はホッとして朝礼に参加していた。 「今日から半年、本店から指導に来られる斎木課長だ」 ウチの課長の紹介で一歩前へ出てきた長身の男性。 課長という肩書のわりに随分と若く見える。 「斎木課長は社長のお孫さんで・・・」 なるほど・・・ね。 そういうことか。結局そんなとこだよね。 これが世間一般でいうコネというものだろう。 実力で昇ってきたのであれば、斎木という課長の自己紹介にも興味が持てたけれど、コネだと分かった瞬間に私は今日の仕事の段取りへと頭を切り替えていた。 数分後、いつも通りの業務が始まる。 私も席について仕事に取り掛かった。 直後、背後からツカツカと歩いて来た足音が、私の隣でピタリと止まる。 仲村!? 私の背中に嫌な汗。 「君が栗原さんかな?」 聞こえてきたのは、仲村の声じゃなかった。
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