初恋は突然に

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う、うそ。 私、褒められてる? しかもこんな大勢の前で・・・。 周りもザワザワとして私を見てる。 先日までのからかいや嘲笑じゃない。 「そ、そんな・・・。大げさなものじゃないので」 途端に恥ずかしくなった私は、慌てて否定した。 「いや。そんなことはないよ。先日たまたま行った取引先で、君の電話対応も褒められたよ。おかげで商談もスムースだった。期待してるよ。益々頑張って」 そう言うと、課長は颯爽と歩を進めた。 ほんのわずか届いた香水の香り。 キツくない主張に好感が持てる。 スマートな後ろ姿、長い脚。 低すぎず、高すぎず、心地のいい声。 顔は・・・緊張してて良く見てないけど、朝礼の時に・・・確か・・・ なんとかっていう俳優さんに似ていたような・・・。 目を離せずにいた課長の背中が支店長室に消えた。 パタンと閉まるドアの音を聞いた瞬間、呆然と立ち尽くしていた私は大変なことに気が付く。 私、褒めてもらったのに、お礼すら言ってない!
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