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「そんなに可愛いのに見た目で悪口言われたんだ?」
私の反応を見て、聞こえなかったと思ったのか、課長は繰り返した。しかも『可愛い』という言葉を付け足して。
「か、可愛くなんかないです!」
手の中のカツサンドを落としそうになる。
からかってるのかな。こういう時、どういう切り返しをすればいいのだろう。お世辞だって分かってるけど、仲村相手の時みたいに「ふざけるな」とか言えないし、課長の言葉には悪意を感じないし。
「きっと、メガネを外した君を見たことがないんだね。奥ゆかしい内面とかにも、気づいてないんだね。僕はとっても可愛いと思うよ。もちろんメガネをかけてても十分可愛いけどね」
可愛いって連発されて、もう、もう、社交辞令だって分かってても嬉しくて。
しかも大好きな課長が言ってくれたなんて・・・。
信じられない。
こんなシチュエーション初めてで、次の言葉なんか見つからなくて、それでも何かを伝えたくて私は口をパクパクと動かすのだけど、気持ちは声にならなかった。
「ふっ。そういう反応も新鮮で、可愛いと思うよ。さ、食べよう。昼休み、終わってしまうよ」
カツサンドの味は、覚えてない。でもきっと課長が勧めてくれたんだから美味しかったに違いない。
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